金曜日の恋人〜花屋の彼と薔薇になれない私〜
 ひと月ぶりに会う美香は芳乃を見て、少し驚いたように目をみはった。美香は奥様会のメンバーのなかではおとなしいほうで、芳乃と同じくいつも聞き役に徹している子だ。

「前回も思ったんだけど、芳乃さん、最近少し雰囲気変わったよね」
「そう?」
「うん……あ、お洋服のせいかも!」

 美香は納得したように、うんうんとうなずいた。

「そういう少しカジュアルな服装のほうが似合うのね。すごくいいと思う」

 芳乃のワードローブはワンピース、ハイゲージのニット、ミディアム丈のスカートなどのいかにもコンサバなものばかりだったのだが、最近少しカジュアルな服を買い足した。これまでの服だと、あのファミレスで浮いてしまうからだ。
 今日もざっくりとしたブルーのニットに細身のデニムを合わせていた。自惚れかもしれないけれど、自分でもこっちのほうが似合うような気がしている。カジュアルなほうが顔の地味さが目立たないように思うのだ。

「服のせいだけじゃないと思うわ」

 あでやかな笑みを浮かべたのは里帆子だ。

「芳乃さん、綺麗になったもの。お肌とか髪とかツヤツヤしてる」
「やっぱり、里帆子さんもそう思う?」

 里帆子が同調してくれたのが嬉しかったのか、美香はウキウキした様子で話を続ける。

「化粧品とか変えたの? オススメあったら教えてよ、芳乃さん」
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