契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「初めまして、菱川大吾と申します」
大吾さんは父と母の前に座り、挨拶を始める。私も大吾さんの横に座って、彼のことを気にしながらも父の顔を窺っていた。
さっきから微動だにせず、大吾さんを見ても表情ひとつ崩さない。何か言うわけでもなく、聞く耳持たずという感じでただ黙って一点を見つめている。
これはどう見ても、許す気がないらしい。
一方母は、どうやら大吾さんが自分の好みタイプだったらしく、大吾さんを見てトロンとした目をしているから、こちらはこちらでめんどくさい。
でもこの調子なら、母から攻略していけばうまくいくかもしれない。なんていうのは、安易な考えだろうか。
少し解決の糸口が少し見えたようで頬を緩ませながら父に目を向けると、私のことを見上げていた父と目が合う。そして次の瞬間、私のそんな浅はかな考えは一瞬で消え去ることとなる。
「八重。そして、菱川さんと言ったかな?」
「はい」
父が大吾さんの名前を呼び、大吾さんが返事をする。父が口を開いたことに驚きながらも、彼と顔を見合わせ『よし』とアイコンタクト。ここで話の流れを作らなければと、父を真っすぐ見つめた。