契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
会社の駐車場に車を停めると、私たちが到着するのを待っていた斎藤さんが車に駆け寄り運転席のドアを開けた。
「社長。おはようございます」
「おはよう。斎藤、今日はよろしく頼む」
「はい」
斎藤さんはそうひと言だけ返事をして、助手席側のドアを開けに来てくれる。
「天海さん、おはようございます」
「おはようございます」
ドアを開けてもらうなんて慣れないことに、戸惑いながらも車から降りる。自分は社長でも何でもないのにと恐縮していると、大吾さんが愉快だと言わんばかりに笑い出した。
「八重は俺の妻になるのだから、そういう扱いにも慣れるように」
「……は、はい」
そう言われても、扱いにも妻と言われることにも、まだ当分慣れそうにない。出来れば出勤はひとりでと思うのは、私のわがままだろうか。
ふうとため息をついた私の肩に、トンと優しく手が乗せられる。
「どうした? ため息なんかついて、もう疲れたのか?」
大吾さんに顔を覗き込まれて、咄嗟に身体を仰け反らせた。眉目秀麗な顔が真ん前に現れての無意識に起こった現象だというのに、大吾さんは不愉快そうに眉根を寄せる。