契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 大吾さんは早口でそう言うと、顔から笑顔が消える。さっと上着を整え、私の返事を待たずに颯爽とエレベーターに乗り込んだ。

「大吾さん、お忙しいんですね」
「社長ですからね、それなりにお忙しい方ではあります。でもあなたの前での社長は肩の力が抜けていて、いい顔をしていますよ」
 
 斎藤さんはニコリと微笑んでそう言うと、「私たちもそろそろ行きましょう」と歩き出す。
 
 大吾さんがリラックスできているみたいでよかった。

 私には大吾さんの表情の違いがまだわからないけれど、斎藤さんが言うのだから間違いないはず。

 大吾さんの重荷にだけはなりたくない。彼がくつろげる、唯一の場所になれるといいのだけれど……。
 
 そんな思いを胸に抱きつつ、斎藤さんのあとに続いた。



< 127 / 172 >

この作品をシェア

pagetop