契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました

 会議を終えた大吾さんが社長室に戻ってきたのは、私が仕事を終えてから十分ほど経ったころ。社長室のドアがドンッと派手な音を立てたと思った瞬間、社長室と繋がっている執務室のドアが間髪を入れずに開けられる。

「八重、出かけるぞ」

 そう言いながら私のところまできた大吾さんの額には、走ってきたのか汗が滲んでいる。

「は、はい。ですが、一度落ち着いたらどうですか? 飲み物を用意します」
 
 斎藤さんの執務室には、小さな給湯室が備え付けられている。そこには冷蔵庫もあって、中からその冷えたお茶を取り出しコップに注ぐ。
 
 季節は梅雨だというのに今日は朝からよく晴れていて、少し汗ばむような陽気だ。大吾さんが好きなコーヒーを用意する?とも思ったが、まずは喉を潤し身体を冷ますほうが先決だ。

「社長、どうぞ」
 
 応接セットのソファに座る大吾さんはコップを受け取ると、余程喉が渇いていたのかそれを一気に飲み干す。生き返ったといわんばかりに大きく息を吐き、彼の横に立つ私を見上げた。



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