契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
大吾さんは濡れたままの私をソファに座らせバスタオルで覆うと、髪をわさわさと拭き始めた。
「先に着替えるか?」
そう言われて、自分が下着まで濡れていることに気づく。でも今はなにもしたくない。動くのもおっくうで、首を横に振る。
「そうか、わかった。じゃあこのまま拭くぞ。なあ八重。ずいぶんと探したんだが、今までどこに行っていた? どうして電話に出てくれない?」
「電話……」
ゆらりと手を動かし、カバンの中からスマホを取り出す。
「あ」
ディスプレイを見ると、電源が入っていない。誰からの電話にも出たくなくて自分で切ったのだろうけれど、いつ切ったのか覚えていない。
「すみませんでした。でも、私なんて探してくれなくてもよかったのに」
冷たい口調でそう言うと、大吾さんの手を払いのける。
このまま私がいなくなれば、別れる手間が省けると大吾さんはホッとするんでしょ?
そんなことを考える自分が心底嫌いだ。
大吾さんと田町さんが寄り添う画像を見せられても大吾さんのことを嫌いになんてなれないのに、心にもないことを言ったり考えたりしてしまう。