契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 大吾さんは先に話したほうがいいと言っていたけれど、どうやらそうでもなかったみたい。じゃあせめて母だけでも説得して許しを得ようと、身体の向きを変えようとしたそのとき。
 
 部屋のチャイムが鳴り、すっくと立ち上がる。ドアまで小走りで向かい、誰だろうと思いながらゆっくりとドアを開けた。

「え、大吾さん?」
 
 なんで? どうして大吾さんが来るの?

 大吾さんは仕事があるし、来ることは想定していなかった。この時間に来てくれたということは、仕事を中断させてしまったのだろうかと申し訳ない気持ちが胸に広がる。
 
 正直なところ、相手が自分の両親とはいえひとりでは心細かった。説得してなんて偉そうなことを思っていたけれど、なにをどうやって話せばいいのか結局何ひとつ思いつかなかったのだ。
 
 でもどうして偽装結婚なのにここまでしてくれるの? ああ、そうか。この時点で契約のことがバレたら、せっかくの計画が無駄になってしまうものね。
 
 そんなこと少し考えればわかることなのに、私ったらウキウキしちゃって……。
 
 自嘲的にふっと笑うと、もう一度彼を見上げる。走ってきたのか額には汗がにじんでいた。



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