契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「遅くなって悪い。ご両親に挨拶をさせてもらいたい」
 
 少し息を切らしながら話す大吾さんを、黙ったままじっと見つめる。
 
 どうしてそんなに必死なのだろうか。私たちは偽装なのに、そんな真剣な顔をして言われたら勘違いしそうになるじゃない。
 
 それとも、これも芝居なのだろうか。もしそうだとしたら、さすがとしか言いようがないし少しショックだ。

「八重? どうかしたのか?」
 
 心ここにあらず。ボーッとしていたところに突然顔を近づけられて、目を見開きしばし固まる。でもすぐに我に返って笑顔を見せた。

「い、いえ、なんでもありません。どうぞ、中に入ってください」

 とにかくこんなところで話している場合じゃないと、大吾さんを部屋へと招き入れる。私の両親への挨拶がこんな形になってしまい申し訳ないけれど、正直なところひとりではどうにもならないと心細かったから彼の訪問はありがたい。

「大吾さん?」
 
 つま先立ちで少し背伸びをすると彼の耳に顔を寄せ、声が漏れないように小声で囁く。

「うまく騙せるでしょうか? 父が、結婚なんか許さないって……」



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