ありきたりの恋の話ですが、忘れられない恋です
[この埋め合わせは、高いわよ。岩岡屋の焼肉だからね]
焼肉食べたいねと言って、気軽には入れないお値段のお店を指定される。
本当にごめんなさいと謝り、高い出費を覚悟した。
そして、次回会う時、理由を問いただされそうだと思うと気が遠くなりそうになる。
「連絡したのか⁈」
「うん」
そう答えて、また外を眺めた。
「どこ行くの?」
「一緒に、ご飯を食べる時間ぐらい作ってくれるだろう⁈」
私が断らないと断言するような晶兄の口ぶりに、なぜか素直に納得できない。
こちらは、晶兄のせいで出会いもなくなり、高い出費を約束させられたのだ。
「別にいいけど、居酒屋とかは嫌だからね」
「了解」
しばらく車を走らせて着いたところは、古民家風の看板もない普通の建物だった。
「誰の家なの?」
「リノベーションした、看板のないレストランだよ。おいで…」
エスコートするように手を差し出されたが、戸惑っている間に手を握られてしまい、手をひかれてお店の中に入っていた。
「いらっしゃいませ…あら、珍しい人が来たのね」
30半ばぐらいの女性が、晶兄の肩を叩いた。
「個室空いてる?」
「えぇ、空いてるけど…そちらの女性は?」