愛は知っていた【完】
「朱里さん、マネージャー辞めちゃってからなんだか元気が無いみたいだけど」


白井先生は私のことを下の名前で呼ぶ。
元々お兄ちゃんのことを英と呼んでいたから区別するためだと思うけど、お兄ちゃんのことはそのまま名字呼びなのは、それだけその呼び方が定着していたからなのだろうか。

私が入学前もお兄ちゃんは部活の話をしていた時に、よく白井先生の名前を口にしていた。
個人的な練習に付き合ってもらったり夕食をご馳走してもらったりと、白井先生にはかなりお世話になっているらしい。
だから私も白井先生とは頻繁に接触していたのだ。

けれどマネージャーを辞めてから、授業を教わっているわけでもない私は白井先生とめっきり話す機会も無くなっていたから、こうして言葉を交わすのは久しぶりに感じられた。


「大好きなお兄ちゃんに彼女ができちゃったからかな?」
「……先生って性格悪かったんですね」
「僕は君を慰めてあげようとしてるんだけどな」
「…………」
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