愛は知っていた【完】
*
「久しぶりだね朱里ちゃん」
時は経ち、外は一面銀色世界が広がる冬真っ只中、暖房が行き届いてない女子トイレで偶然会ったのはお兄ちゃんの彼女である先輩だった。
ひんやりとした空間に、ピリリと嫌な空気が走った気がする。
マネージャーを辞めてから先輩とも面と向かうことがなくなってたから、先輩の言う通り久しぶりの会話だった。
「こんにちは……」
鏡の前で髪をいじっていた私は、かしこまって控えめに挨拶をする。
話しかけてきたくらいだからきっと用件があるんだ。
心の準備をしながら恐る恐る先輩を見れば、相変わらず可愛らしい顔をした先輩は柔らかく微笑んだ。
私はこの笑顔が大好きで、でもそれがいつしか僻みをぶつける対象になっていて、それもこれも先輩がお兄ちゃんと付き合いだしたから。
……先輩、お兄ちゃんとキスとかしたのかな。
まさかそれ以上のことも……?
考えれば考えるほど自分の中にある汚い感情が増幅する。
本人がいる前でなんてこと考えてるんだ。
止めよう。もうこういうことは考えないって決めたんだ。
「久しぶりだね朱里ちゃん」
時は経ち、外は一面銀色世界が広がる冬真っ只中、暖房が行き届いてない女子トイレで偶然会ったのはお兄ちゃんの彼女である先輩だった。
ひんやりとした空間に、ピリリと嫌な空気が走った気がする。
マネージャーを辞めてから先輩とも面と向かうことがなくなってたから、先輩の言う通り久しぶりの会話だった。
「こんにちは……」
鏡の前で髪をいじっていた私は、かしこまって控えめに挨拶をする。
話しかけてきたくらいだからきっと用件があるんだ。
心の準備をしながら恐る恐る先輩を見れば、相変わらず可愛らしい顔をした先輩は柔らかく微笑んだ。
私はこの笑顔が大好きで、でもそれがいつしか僻みをぶつける対象になっていて、それもこれも先輩がお兄ちゃんと付き合いだしたから。
……先輩、お兄ちゃんとキスとかしたのかな。
まさかそれ以上のことも……?
考えれば考えるほど自分の中にある汚い感情が増幅する。
本人がいる前でなんてこと考えてるんだ。
止めよう。もうこういうことは考えないって決めたんだ。