愛は知っていた【完】
せっかく最近自分の身の回りのものが見えてきて、お兄ちゃん無しでも学校生活が充実してきたというのに。

そうだよ、噂では同じクラスの滝本が私のこと好きらしいし。
あいつ普通に良い奴だし可愛いところあるし、野球もやってるし、あとこの前宿題見せてくれた。
結構ポイント高いじゃん。
そろそろ私も彼氏作るべきかなーなんて、真剣に考えてみたりして。


「さっきね、輝雪と別れたんだ」
「……え?」


必死に二人のことを考えないようにしていた私に先輩は言ったのだ。
一瞬我が耳を疑ってとぼけてしまった私が先輩を見やると、彼女は尚も微笑んだまま「フラれちゃった」と。

フラれた……って、お兄ちゃんが先輩を?
可愛くて気が利いて思いやりがあって、他の部員も目をつけていたモテモテの先輩をフった?

唖然とする私に先輩はとんでもないことを続けた。
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