愛は知っていた【完】

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家に帰ると両親が温かな持て成しで迎え入れてくれた。
ただいま、という言葉を発する機会は寮生活をしていてもあることなのだが、やはり帰ってくる場所が違うと込められた意味も大幅に変わってくる。

四人で食卓テーブルを囲み、父さんと母さんが両隣りに座って俺と朱里がその向い側に座るこの定位置とか、母さんの作ったじゃがいもが大きめの肉じゃがとか、朱里が昔よく湯船に浮かべていたアヒルも風呂場には健在していて、何もかも久しぶりに感じた俺は穏やかな気分になった。
実家は本当に居心地が良い。
長いこと離れていたからその有難味も尚更ひしひしと伝わってくる。

帰宅してから話しっぱなしだったせいか、はたまた短い旅の疲労が今になって現れたのか、突然睡魔に襲われた俺はそろそろ就寝することを決め、予め元自分の部屋に用意されていた布団に入って横になっていたのだが、軽くノックの音が聴こえたかと思いきや、朱里の「入っても良い？」という声に心臓が跳ねた。