愛は知っていた【完】
変に意識している自分が恥ずかしい。
俺が良いぞと返事をすれば、遠慮がちに部屋に入ってきたパジャマ姿の朱里は、はにかみながら言ったのだ。


「一緒に、寝よ……?」


もちろん戸惑いが生じた。
自分の理性が保てる自信が無かったからだ。

だがあれからも何度か一緒に寝ることはあった。
ただそれは、脆いと言えどケジメをつけてからまだ日が浅い時期の話だったため、いくらか抑制ができていただけのこと。

今はどうだ。本当に朱里の誘いを受け入れて大丈夫なのか。
俺は心の中で自問自答をした。
大丈夫だと言い切ることができなかったなんて、了承を得て明るい笑みを浮かべた朱里に伝わったら、最低だと幻滅されるかもしれない。

ピンク色に花柄の女の子らしい枕を持ったままの朱里は、ちょっと小走りになって俺のもとへ飛び込んできた。
その拍子にぼふっと音を立てた布団から良い匂いがする。


「おいっ、危ないだろ!?」
「えへへー」


数回むせた俺に悪びれた様子もなくニカッと笑って見せる朱里。
そんな無邪気な顔が幼少の姿を彷彿させる。
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