政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 零士君が陰で私に歩み寄ろうとしてくれていたことがわかるたびに、胸がギュッと締めつけられていく。

 バンドの話をしながら車に揺られること約一時間。着いた先は関東でも有数の水族館だった。

「今一番来たくない場所かもしれない。でもだからこそ俺との楽しい思い出に塗り替えてほしいんだ」

「零士君……」

 きっと千鶴ちゃんから聞いたんだよね。文也との初デートの場所が水族館で、その水族館で振られたってことを。

 その上で連れてきてくれたんだ。

「ここ、水族館の他に遊園地もあるし一日遊べるみたいだから、今日はめいっぱい遊んでいこう」

「うん!」

 正直、水族館にはしばらく行きたくないって思ってた。でもそれじゃいつまで経っても、文也のことを完全に忘れたとは言えないよね。

 零士君の言う通り、思い出は新しいものに塗り替えればいいんだ。

 事前に零士君がフリーパスを購入してくれていたようで、さっそく館内に入ると、大きな水槽で優雅に泳ぐ魚たちが出迎えてくれた。
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