政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 陽気なところがある文也のことだ、きっとそうだよね?

 そう自分に言い聞かせて、「ふたりで行くのは初めてだよね」と話を合わせた。

「まずはなにから見ようか。やっぱりイルカ? それともクラゲとか、順番に見ていく?」

「えっと、そうだね……どうしようか」

 どうにか返事をしたものの、心は大きく乱れている。

 文也は覚えていないんだ。初デートのことを。私は今でも鮮明に覚えているのに……。

 さっきまで幸せいっぱいだったのに泣きそう。

 そういえば文也って、私が話したことを覚えていないってことがよくあった。
 友達のこととか、大学のこととか、本当に些細なことだけれど、この前話したじゃないってことが頻繁にあった。

 ただ単に忘れっぽい性格なんだと思っていたけど、本当は違う? 私の話を聞いているようでいつも聞いていなかった? 一緒に出掛けた場所も、すぐに忘れちゃうの? ううん、そんなことない。たまたまだよね?

 気持ちを入れ替えて、文也と着いたらどこから回るか話をしながら水族館へと向かった。
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