政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 だからといって簡単に引き下がれるほど、零士君への気持ちは軽くない。

 最上階に着き、部屋へと案内する。

「どうぞお座りください。笹野さん、珈琲でも大丈夫ですか?」

「はい、ありがとうございます」

 笹野さんをリビングに通して、私はキッチンに入る。

 まず買ってきたものを冷蔵庫にしまっている途中、リビングの笹野さんを見ると、興味深そうにキョロキョロと室内を見回している。

 なんとなくリビングにふたりの写真を飾るのが恥ずかしくて、結婚式や新婚旅行のものは寝室に飾っている。

 でもそれを今は後悔。もっと目立つところに飾っておけばよかった。

 笹野さんには私と零士君は、愛のない政略結婚をしたと思われているのに。

 そんなことを考えながらも食材をしまい終え、今度は珈琲の準備にとりかかる。

「キッチンもずいぶん変わったんですね」

 棚にしまってある珈琲豆を探している時に聞こえてきた声に、心臓が跳ねる。

「ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったの」

「いいえ、大丈夫です」
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