政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
「今日のことも、千鶴から聞いた。俺との婚約を破棄して家族も捨てる覚悟だと知ったら、あの男は絶対に凛々子を捨てるはずだって」

 そっか。千鶴ちゃんはこうなることを予想していたんだ。だからあんなに文也のことを本気で好きなのか、聞いてきたんだ。

「本当はもっと早く来たかったんだけど、今日は大事な取引先との会食があって。……悪かった」
「どうして零士君が謝るの? 零士君には関係のないことでしょ? これは私自身の問題だもの」

 文也の本性を見抜けなかった自分のせいだ。

 本当のことを言っただけなのに、零士君は唇を噛みしめた。

「そんなこと言うなよ。現に凛々子はそいつにこんな目が腫れるほど泣かされたんだろ? ……お前を泣かせていいのは、俺だけなのに」

 意味深なことを言うと、零士君の長い指が私の目元に触れた。

「零士、君?」

 なにこれ。どうしてこんなに心が落ち着かないの? 相手は零士君だよ?

 ドキドキし過ぎて胸が苦しい。ただ、零士君を見つめることしかできない。
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