政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
「……子、凛々子」

 何度も名前を呼ばれ、ゆっくりと瞼を開けるとそろそろ着陸態勢に入るというアナウンスが流れていた。

「やっと起きたか。座席を戻してシートベルトを締めるぞ」

「あ、うん。ごめん」

 我に返り、急いで座席を戻すと、零士君は私に代わってシートベルトを締めてくれた。

昨日羽田を発って約十二時間。そろそろ新婚旅行の最初の目的地である、フランスのパリに到着する。

 出発日の前夜、あまり眠れなかったから飛行機の中でぐっすりと眠ってしまった。

 その私の隣で、どうやら零士君は仕事をしていたようだ。……なんだか申し訳ない。

 手帳や資料を片づけて、自分のシートベルトを締めると、零士君は嬉しそうに呟いた。

「楽しみだな、旅行」

 その言葉通り、零士君はずいぶんと前から旅行の準備を進めていた。せっかくの新婚旅行なんだから、私の行きたいところ全部連れていきたいと言って。

 ヨーロッパは仕事や家族でよく訪れている零士君とは違い、私は一度しか来たことがない。それも高校の修学旅行でだ。

 実はお母さんが大の飛行機嫌いで、家族で海外旅行をしたことがなかった。専ら近場の国内だったから。
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