政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 楽しくて無意識のうちに零士君の手を引いていた。そしてそのことに気づかないままパン屋に着くと、ここでやっと事態を把握する。

 私に手を握られた零士君はご満悦。

「あっ、ごめん!」

 慌てて手を離そうとするも、零士君はそれを許してくれず、強く手を握られた。

「離さないでよ。せっかく凛々子から初めて手を繋いでくれたのに」

「それはっ……だから、ごめんって」

 謝罪の言葉を繰り返すと、零士君は首を横に振った。

「嬉しいから謝らないでほしい。行こう、大好きなクロワッサンが食べたいんだろ?」

「どうしてそれを?」

 びっくりして目を見開くと、零士君は「しまった」と言うように、顔をしかめた。

「いや、その……実は千鶴からいろいろと凛々子のことを聞いていて」

「千鶴ちゃんから?」

「あぁ。好きな食べ物や嫌いな食べ物とかはもちろん、昔から些細なことでもいいから知りたくて、凛々子のことを教えてもらっていたんだ」

 昔からっていったいいつからだろう。だって幼い頃からずっと嫌われていたと思ったのに。本当に違ったんだね。

 改めて実感していると、零士君は気まずそうに俯いた。
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