純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 仕事で出入りしている兼聡は番人ともよく見知った仲であるため、事情を話せば問題なく通れるはずだ。連れているのがあの睡蓮だと知れば大騒ぎになりそうなので、口止めは必須だが。

 意思の疎通が取れているふたりを見て、有美は「なんだ、あんたら知り合いかい」と眉を上げて言った。そして、納得した笑みを向ける。


「そうね、兼聡さんなら任せられるか。あとでお駄賃やるから、頼まれてくれる?」


 まるで子供のおつかいのような感覚で頼まれたが、ふたりは笑って快く「はい」と返事をした。


 料理人である有美の夫がさっそく揚げたカツレツは、白米や野菜と共に木製の容器に入れられ、弁当さながらに仕上がった。睡はそれを大事に持ち、兼聡と一緒に昼前の街に繰り出した。

 最近東京でも運行し始めたバスに乗り、吉原へ向かう。睡は軽い遠足のような気分でわくわくしているが、兼聡への申し訳なさもある。


「まさかまた吉原に行くことになるとは思わなかったな。兼聡さん、お休みなのに付き合わせてすみません」
「気にしないでください。睡さんとこうして街に出られるなんて夢のようですから」
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