純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
 ただ、誰でもその階級に到達できるわけではない。美貌だけでなく、琴や三味線、読み書きや歌にも優れていなければならず、あらゆる教養を兼ね備えた者だけがなれる。玉響も睡蓮も、努力をして高級遊女となったのである。

 初見世を終えて自らの座敷へ戻り、緊張から解放された睡蓮のもとへ、「お疲れ様!」と明るい声を上げてひとりの花魁がやってきた。

 髪は横兵庫の形に結ったままで、顔立ちも性格もさっぱりとして愛嬌のある、同い年の四片(よひら)だ。

 ふたりは出身はまったく別だが、お互い八歳頃に遊郭に入り、その頃から切磋琢磨し合ってきたためとても仲がいい。

 四片はふた月ほど早く初見世を終えていて、ひと足先に花魁として営業を行っている。ツンとした部分と、可愛らしく甘える仕草の使い分けが絶妙だと、藤浪楼の中では人気が高い。

 今夜は泊まりの客がいないらしく、四片は食事が取れなかった睡蓮のために、わざわざ御膳を持ってきていた。そこに一緒に乗っているあんころ餅に、睡蓮は目を輝かせる。


「あんころ餅だ!」
「羽振りのいい人からもらったの。今日は睡蓮の特別な日だからお祝いにあげるよ。私も食べるけど」
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