純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
なにも心配されることはないのだと、睡は笑顔を向ける。しかし時雨はいまいち信用していない様子で、眉根を寄せたままだ。
「君にここまで届けさせるなんて、江森さんがそんなことをするか? それに、さっき一緒にいた男はなんだ?」
どうやら兼聡といるところも見ていたらしい。不機嫌さを露わにする彼をどう宥めればいいか頭を回転させるが、兼聡との関係やカツレツを届けるまでの経緯を説明するとなると容易ではない。
「話せば長くなるんですが、彼は……用心棒のような感じですかね。安心してください、私も江森さんも気心の知れた方ですから」
とりあえずそこを強調して、兼聡はまだだろうかと大門のほうへ視線を向けたとき、見覚えのある着物姿の遊女がいた気がして、「あっ!?」と声を上げた。
すぐに人の影に隠れてしまったが、大振りな花柄の着物は四片のそれとよく似ていた。慌てて時雨に向き直り、今度は睡が彼の腕を掴む。
「すみません、時雨さん。私行かなきゃ」
「待て、そんな説明で納得でき──」
「旦那様!」
咄嗟に飛び出したひと言に、時雨は面食らったような顔で口をつぐんだ。