純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
大門をくぐったところでキョロキョロする睡だが、先ほどの女性は見つからない。
「間に合わなかったか……」
「睡さん、どうしました?」
肩を落とす睡に、門番と話をつけてきた兼聡が駆け寄る。
「今、四片に似てる人がいたんです。見間違いかもしれないけど」
「本人の可能性も十分ありますよ。門番の許可も取れたんで、光晶屋に向かいながら探しましょう」
「ありがとうございます」
睡は丁寧に礼を言い、ふたりで通りを歩き始めた。
以前は街を歩くと、藤浪楼の睡蓮だと気づいて声をかけてくる者もいたが、今は髪型も着物も違うせいか誰も気に留めない。別人になったような気分で周りを見回しながら歩くが、それらしき人はいない。
そうしているうちに光晶屋に着き、店の奥にある座敷で猫のように横向きに寝ている番頭にカツレツを渡した。彼はわりとすぐに睡蓮だと気づき、驚いた拍子に痛がって大騒ぎだった。
身体はくたばっているものの、元気はありそうで安堵する。久々に顔を見られたのも嬉しい。
きちんと代金を受け取ったあと「わざわざありがとうね!」と深く感謝され、睡は気分よく店をあとにした。