純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 実際に会うと不思議と不安はどこかへ散り、代わりに安堵と嬉しさが込み上げていた。

 愛嬌のある顔を久しぶりに見られて笑みをこぼす睡とは逆に、四片は眉を下げて苦しそうな面持ちになっていく。


「睡蓮、ごめん」


 頭を垂れる彼女を見るだけで、気持ちは痛いほど伝わってくる。睡の表情も切なげに変わっていた。


「あんたの身請け話が突然すぎて、全然気持ちが追いつかなくって。廓を出ようって約束したけど、まさかあんなにすぐいなくなるとは思わなかったから」

「……うん」

「明るく送り出すべきなのに、顔を見たら妬むようなことも言っちゃいそうで会えなかった。でも、あとからすごく後悔して……あのまま会ってもらえなかったらどうしようって、不安で仕方なかった」


 ひと思いに吐露されるあの日の彼女の心情に、睡はただ耳を傾けた。そして、「謝らなくていいんだよ」と言って顔を上げさせる。


「四片の気持ちはなんとなくわかってたけど、ちゃんと聞けてよかった。また、会いに来てもいい?」
「当たり前じゃん! うぅ~」


 四片が子供みたいな調子で泣きべそをかくので、睡は笑って彼女の背中をぽんぽんと優しく叩いた。
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