純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
四片はちゃぶ台の上に御膳を置いて座布団に座ると、さっそくそれに手を伸ばした。
奔放な彼女に、睡蓮は笑って「ありがと」と礼を言う。急に腹の虫が鳴き始めたので、着替えもそこそこに手を合わせ、箸を持った。
「で、どんな方だったの? 初めてのお客様は」
四片はあんころ餅を片手に、興味津々な様子で問いかける。睡蓮はもぐもぐと口を動かしながら、つい先ほどの男性の姿を思い返す。
吉原の隣町で会社を経営しているという岩政は、三十代半ばのどっしりとした体格の男で、玉響の宴会に同席した際に数回見たことがあった。あちらも付き合いで来ていたようだったが、睡蓮に向かってニコニコと笑いかけてくれたのが印象的である。
今日も、三味線の音色が響く中、岩政は優しい笑みを浮かべて睡蓮を見つめていた。元からお人好しな彼女は、何度かつられて笑みを返しそうになった。
『初会では澄ましていなきゃいけないよ。笑顔を見せるのは裏を返すとき。簡単には手に入らない存在だって思わせるためにね』
玉響からの教えを守ってツンとしていたが、表情に出さないのはなかなか難しい。無視をしているようで心苦しくもなる。