純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
片方の下駄を持ち、ケーキの箱を手にした睡をおんぶするという、なんとも滑稽な姿で家路を急ぐ。その最中、背中から申し訳なさそうな声が聞こえてくる。
「私、ずっとぎこちなかったですよね。あの日から、どう接したらいいかわからなかったんです。その……口づけされたのは初めてだったので」
「ああ、あのときは兼聡ってやつに嫉妬していたんだ。悪かったな」
やはり気まずかったのだと納得した時雨は、正直に打ち明けた。あっけらかんとしたその言い方に、睡はふふっと笑って首を横に振る。
「本当は、嬉しかった」
純粋で素直なひと言が聞こえると共に、睡が背中に頬をくっつけるのがわかり、時雨は今すぐに強く抱きしめたい衝動を堪えるのに必死だった。
家の中に入ると、まず冷え切った睡の身体を温めるために暖炉の前へ促した。彼女はちょこんとしゃがみ込み、「あったか~い」と言いながら両手のひらを広げて炎の前にかざしている。
その姿すらも可愛いと思いつつ、時雨はあるものを手にして自身も暖炉へと向かう。彼女のそばに寄り添ってしゃがむと、広げている左手を取り、薬指に銀色の輪を滑らせた。