純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
廓にいた頃のように、縁台に並んで座ってしるこを食べながら、睡は四片にねだられてクリスマスや正月はどう過ごしたかという話をした。
「なにそれ、羨ましすぎるんですけど」
一部始終を聞いた四片は真顔でそう言ったかと思うと、睡の左手を持ち上げて指輪をうっとりと見つめる。
「いいなぁ〜、やっぱり外の世界いいなぁ〜。もう早く出たい!」
駄々をこねる子供のような彼女に笑いつつ、睡は「私も早く外で会いたいよ」と切実に返した。
ひとしきり羨んだあと、四片は入口の暖簾の向こうに奥二重の瞳を向け、ぼんやりしつつ小さなため息をつく。
「……足抜けしようかな」
ぽつりと呟かれたひとことに、睡はぎょっとして餅を喉に詰まらせそうになる。
「っ、えぇっ!?」
「大丈夫、本気じゃないよ。いや、半分本気か……」
四片は笑ってはいるもののどこか上の空のような調子で、睡は急に不安を覚えた。
なぜ足抜けしようなどと考えているのか聞こうとしたとき、ひと足先に四片が小声で打ち明ける。
「私、好きな人ができたんだ」
彼女が色恋の話をするのは初めてだった。睡は息を呑み、確認する。