純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「四片……」
「つらいよ。彼を想いながら他の男に抱かれるのは」
四片の苦悶の表情や声色から悲痛さがひしひしと伝わり、睡も胸を引き裂かれるようだ。
好いた男だけに身も心も捧げたい──女なら誰しもが持つであろう願いは、花魁でいる限りは叶わない。身体を許す前に身請けされ、その相手と結ばれた睡は特別恵まれた人間なのだ。
無情な現実にやりきれなさでいっぱいになっていると、四片は「ごめん、こんな話したら睡を困らせるだけなのに」と謝り、力無く笑った。
睡も沈痛な面持ちで首を横に振る。
「私も今ならわかるよ。足抜けしたいっていう四片の気持ちも、姉さんが死を選んだ理由も」
それぞれが見つけた〝愛〟というものは、命を懸けるほど尊いものなのだ。
睡が花魁のときに四片の話を聞いていたら、きっと〝足抜けなんて馬鹿な真似はやめて〟と引き止めていただろう。けれど今は、廓という牢獄を出ることで得られる幸せの大きさを知ってしまった。
「四片が本気で足抜けしたいなら、私も手伝う」
睡が宣言して四片の手をぎゅっと握ると、彼女は意外そうに目を丸くして勢いよく振り向く。