純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
なにかを我慢しているような彼の面持ちを、睡はまじまじと見上げて「兼聡さん?」と呼びかけた。
少し逡巡してから、兼聡は口を開く。
「睡さん、俺は──」
真剣な表情でなにかを言いかけたそのとき、「あれ?」という声と共にふたりの間に見知らぬ男が割り込んできた。
驚いて兼聡と同時に振り向くと、二十代半ばくらいの男ふたりが睡の顔を覗き込む。
大柄で軽薄そうな男と、坊主で強面の男。どちらも着物を着崩し、あまり身なりがいいとは言えない粗野な印象で、睡たちは一瞬怯んだ。
「ねえ君、もしかして睡蓮? 花魁辞めたんじゃなかったの?」
「吉原に出戻りか。そいつはいい」
にやにやと卑しい笑みを浮かべるふたりは、どこかで睡の顔を知っていたらしい。睡は険しい表情で身構える。
「な、なにかご用ですか……?」
「岩政って人知ってるでしょ。俺らあの人の下で働いてて、睡蓮の話はよく聞いてたから一度会ってみたくてさ。君の写真を見ただけで見世の中には入れなかったけど」
「あの人奥さんとうまくいってなくて、ゆくゆくはあんたを愛人として迎える気だったらしいぜ」