純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
懐かしい名前と、その人の事情まで勝手に暴露され、睡は複雑な気持ちになった。
睡が振袖新造だった頃から目をつけていたという岩政。時雨が現れなければ、いつかは岩政に身請けされていた可能性が大きいが、やはり彼には正妻がいたようだ。
予想はしていたが、もしその未来になっていたらと思うと、少し身震いする。
「岩政の旦那は『ただ話を聞いてくれる存在が欲しかった』って言ってたけど、ありゃ嘘だよな。こんな上物に手を出さずにいられるわけがねぇ」
強面の男が舌なめずりをして睡の顔を覗き込んでくるので、兼聡が堪らず声を上げる。
「やめてください。彼女はもう花魁ではないし、出戻ったわけでもありません」
怯まずに毅然と物申すが、男たちは意に介さずふんと鼻で笑う。
「坊ちゃんは引っ込んでろよ。花魁じゃなくたって身体を売ってたことに変わりないんだからいいだろ、ちょっと遊ぶくらい」
「正直、売女にあんな高額な金を払うなんて納得いかなかったんだよな。つってもカフェーの女給じゃ物足りなさすぎるし、まあタダとは言わないからさ」
遊女を性の道具にしか思っていないであろう彼らの発言に、睡の中でなにかがぷつりと切れる感覚がした。