純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 玉響や四片、大切な仲間たち皆を侮辱されたも同然だ。見世でこんな言動をする者がいたら、奉公人に摘まみ出されている。ここは廓ではないが、女として黙っているわけにはいかない。


「お前ら、いい加減に──!」


 険しい顔の兼聡が我慢ならず一歩足を踏み出した瞬間、それを制するように睡が彼の前にすっと手を出した。

 睡は普段の朗らかさを消し、美しくもぞっとするほど冷たい表情で男たちをまっすぐ見据えている。物怖じしない堂々とした佇まいは気高き花魁の姿を彷彿とさせ、兼聡は息を呑む。


「私はもう花魁ではありませんが、夫婦の契りを交わしております。人のものに手を出すなら、それなりの覚悟がおありなんでしょうね」


 一段と厳しい声色で言い放つ睡に、男たちは面食らったように口をつぐんだ。


「主人は、私を千両の金と一生分の愛で買った男。あなた方に、それ以上の財力と甲斐性がないのならお引き取り願います。他の誰に対しても同じ。女の肌に触れるのは、決して安くはありません」


 睡はたじろぐ彼らをさらに睨みつけ、とどめの言葉を突き刺す。


「遊女が皆、簡単に身体を売っていると思わないで」
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