純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 初めては想い合った男と結ばれたい──廓にいる遊女には、そんな願いを持つことはできない。ここにいる限り、自由はないから。

 明治初期に娼妓解放令が成立したが、遊女が自由意志で営業しているというのは建前であり、望んで遊郭にいる者などいないに等しい。様々な理由で背負った借金を返すため、皆仕方なく身体を売っているのだ。

 こんな世界では相手を選べないのが当然だと、もちろん睡蓮も承知している。四片のように、少しでもいいほうに考えて気を紛らわせるしかないだろう。

 初めての相手は女将の裁量によって決められるが、幸い藤浪楼の女将はとても遊女思いだ。この人なら安心して任せられるだろうと、きちんと判断した相手を宛がってくれるので、その後の仕事に支障をきたす者はほとんどいない。

 それだけは救いだと思いつつ、睡蓮は口元を緩める。


「女将の目利きは外れないって有名だしね」
「そうそう。今日のシロクマさんも、きっとその包容力で優しくしてくれるよ」
「ふふ。あったかそうだね」
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