純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

「つまり、今すぐ俺の前から消えろと言っている。その脆弱な頭では理解できなかったか?」


 峻厳(しゅんげん)なこの男には敵わないと悟ったのか、ふたりは悔しそうに顔を歪め、「クソッ」と吐き捨ててさっさと退散していった。

 騒然としていた周囲も徐々に落ち着きを取り戻し、門番にも軽く事情を説明した。丸く収まったところで、睡はやっと礼を言う。


「時雨さん、ありがとうございました。……ごめんなさい」


 続けて謝ると、時雨は先ほどとは打って変わった安堵の表情で睡の頭を撫でる。


「遠目でも男たちと張り合っているのがわかったから焦ったよ。無事でよかったが、あまり無茶をするな」
「はい」


 確かに、時雨も兼聡もいなければどうなっていたかわからない。それに、啖呵を切る姿を見られたのも少し気まずく、肩をすくめる。


「でも、とてもしたたかで美しかった。君の度胸にますます惚れたよ」


 反省していたものの、時雨は意外にもそう言って口角を上げた。

 睡は目をぱちくりさせたあと、じわじわと頬を火照らせる。今の言葉を、難なく男ふたりを懲らしめた時雨にそっくりそのまま返したい。
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