純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 勇敢だったのは時雨だけではなく、兼聡も同じだ。睡は自分を守ろうとしてくれていた彼に向き直る。


「兼聡さんも、巻き込んでしまって本当にすみません。助けてくださってありがとうございました」
「いや、俺はなにもできませんでしたから」


 深々と頭を下げる睡に、兼聡は手のひらを振って苦笑を漏らした。

 睡は時雨がまた誤解してしまわないよう、「偶然お会いして、少し話をしていたらあの人たちが来たんです」と説明する。時雨は軽く頷き、兼聡と視線を合わせる。


「迷惑をかけた。すまない」


 端的に謝った彼は睡の手を取る。そうしてこの場を去ろうとしたとき、睡は急に反対側の腕を掴まれた。

 驚いて振り返ると、兼聡は驚きと困惑が交ざったような表情で一点を見つめている。その瞳が捉えているのは睡ではなく、時雨だ。


「あなたが、睡さんの……」


 瞠目して呟く彼を見て、睡は怪訝そうに首を傾げる。


「どうしたんですか?」
「睡さん、行っては駄目だ」


 腕を掴む手の力を強める兼聡は、これまでに見せたことのない険しい顔で時雨に告げる。


「俺は、あなたが睡さんを幸せにできるとは思えません」
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