純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
突然そんなふうに物申す彼に、睡は動揺して歪んだ笑みがこぼれた。
「兼聡さん、なにを言って……」
「君は、睡を愛しているのか?」
睡に構わず、表情を変えない時雨が冷静に核心を突く。兼聡も目を逸らさず、「はい」としっかり答える。
「睡さんが好きです」
兼聡の気持ちを今初めて知った睡だけが唖然としている。これまで彼の好意を感じてはいたが、友愛の類だと思っていたから。
時雨も繋いだ手に力を込め、恋敵をまっすぐ見つめ返す。
「俺も同じなんだ。悪いが彼女は譲れない」
力強い光を宿した瞳からは彼の本気さが感じ取れ、兼聡はわずかに目を見張った。動揺を隠せずにいた睡も、とりあえず返事をしなければと思考を切り替える。
兼聡の気持ちは素直に嬉しいが、もちろん応えることはできない。それは今はっきり伝えておいたほうがいいだろう。
ただ、睡が気になるのは『あなたが睡さんを幸せにできるとは思えません』というひと言。挑発しただけなのかもしれないが、兼聡の鬼気迫ったような表情を見ると、なにか別の理由があるのではないかと漠然と感じたのだ。