純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
しかし、それがなんなのか見当もつかない今、睡は自分の気持ちを信じるしかない。時雨への揺るぎない愛を。
睡は「兼聡さん」と呼び、真正面から彼と視線を合わせる。
「私は、なにがあっても時雨さんと一生を添い遂げると決めたんです。この選択に後悔はしません。たとえ彼が悪い男で、幸せになれなかったとしても」
しっかりとしたその意思に、兼聡ははっと目を見開いた。
「時雨さんと一緒にいられなければ、生きている意味がない……そう思うくらい、私も彼を愛しているんです」
儚げな笑みを浮かべて正直に伝えながら、脳裏に玉響の姿が過ぎる。
(……姉さん、こういうことだったんだね。本気で人を愛するって)
愛する人と共にいられないのなら、生きている意味さえ見失う。その感覚がようやくわかった。時雨がいなくなったら、睡も一度は死を考えるかもしれない。
睡の想いの強さを知った兼聡は返す言葉が見つからず、睡を掴む手の力を緩める。
悲しげに瞼を伏せる彼に、睡は胸がきりきりと痛むのを感じながらも「すみません」と頭を下げ、背を向けて歩き始めた。