純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

「……よかった、君が俺を選んでくれて」


 大門を抜けて車に向かう最中、時雨がわずかに安堵が滲む声で呟いた。睡は眉を下げて微笑む。


「心配しましたか?」
「まあ、少し。あんなふうに挑発されたらな」


 時雨も兼聡の発言はただの挑発だと受け取っているようだ。誰にそそのかされたとしても、先ほども言った通り睡の気持ちが変わることはない。

 しかし四片や兼聡の想いを知った今、悠々と暮らしていることの申し訳なさも募っているし、遊女の存在を罵られて、やはり自分は時雨に相応しくないのではないかと自信を削がれてしまった部分もある。

 車に乗り込むと、睡は時雨の手に自分のそれを重ねてぎゅっと握る。


「私は今、人生で一番幸せです。ただ、手放しでは喜べないけれど」
「睡……」
「でも、だからこそ時雨さんをずっと大切にします。私たちを取り巻く人も、皆」


 心苦しくなると同時に、自分はとても幸せであり、その運命に感謝してかけがえのない人をいつまでも大切にしたいと改めて強く思った。
< 164 / 247 >

この作品をシェア

pagetop