純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 翌日、睡は意を決して江森夫妻に自分が遊郭にいたことを打ち明けた。今後ヱモリでも昨日のように絡まれたらいけないと懸念し、迷惑をかける前に話しておこうと思ったのだ。

 店のテーブルに座る有美は目をしばたたかせている。彼女の隣に座る夫は普段から寡黙なので声は発さないが、驚いているのは見て取れた。


「睡ちゃんが、花魁……!?」


 信じられないといった調子で聞き返す有美に、睡は沈痛な面持ちで頭を下げる。非難されても仕方ない。


「黙っていて申し訳ありませんでした」
「本当に、どうして言ってくれなかったの!? もっと早くに知ってたら、いろんな話聞いて盛り上がってたのに!」
「……へっ?」


 有美の口から出たのは非難ではなく興奮気味の声だったので、睡はぽかんとして顔を上げた。

 彼女は拝むように手を組み、なぜかうっとりしている。


「遊郭の粋な世界、私好きなのよ~。まさか睡ちゃんがそこにいたとは予想外すぎるけど、九重さんが身請けしたってことでしょう? そういうなれそめも素敵じゃない!」


 頬をぽっと染めて楽しそうにしている有美に、今度は睡が目をぱちくりさせる。受け入れてもらえないかもしれないと思っていたので、この反応は予想外だ。
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