純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 少なくとも有美は好意的に捉えているようだが、睡の不安要素はまだある。


「でも昨日、私のことを知っている男性に少し絡まれたんです。もしこのお店にもそういう人が来たら、絶対に迷惑をかけてしまうので……」
「そんなの気にしなくていいわよ。万が一無礼者がやってきたら、この私が片っ端から追い払ってやるから。ねぇ?」


 あっさりと言い切った有美は、夫に同意を求める。彼もひとつ頷き、「うちの味を好んでいる客は、なにがあっても通ってくれるから大丈夫だ」と頼もしい言葉を返した。

 目を見張る睡に、有美は眉を下げて微笑みかける。


「あんたも大変だったんだね。でも過去は過去、大事なのは今どう生きるかよ。ここで働いていたいならこのままいればいい。私らは睡ちゃんの味方だからね」


 温かい言葉に睡の胸はじんとして、澄んだ双眼に涙が滲んだ。

 かけがえのない人に出会えた幸運に幾度となく感謝し、「ありがとうございます」と深く頭を下げた。


 自分は本当に恵まれていると、睡は思う。これまで世話になったのは素敵な人ばかりだ。

 中でも、やはり姉女郎は特別だった。感謝を伝えられないまま別れてしまった彼女に、無性に会いたくなる。
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