純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
そこで、睡は希望を出して平日に休みを取らせてもらい、ひとりとある場所へ向かった。
遊女の投げ込み寺と称される浄閑寺だ。ここに玉響も眠っている。今日は彼女の月命日なこともあり、ようやく状況が落ち着いたので墓参りをしようとやって来たのだ。
〝生まれては苦界、死しては浄閑寺〟
そう川柳で詠まれた通り、悲しい人生を送った身寄りのない遊女が何万人も葬られた場所である。道順は有美が教えてくれ、吉原からもさほど離れていないため迷わずに行くことができた。
本堂の裏手に回ると、遊女たちの霊を慰めるために建てられた立派な石積みの塔がある。この基壇の中に骨壺が積み重なっており、生々しく異様な雰囲気を醸し出している。
話には聞いていたが、実際に見るとかなり心にくるものがある。それでも玉響がいると思うと、目を逸らすことができなかった。
しばし供養塔を呆然と眺めていたとき、足音がしてはっとする。振り返ると、山茶花の花束を抱えたひとりの男性がやってきた。
やや光沢感のある上質な着物を纏った端整な顔立ちの彼は、睡に笑顔を向けて「こんにちは」と挨拶する。
その瞬間、睡は目を見開いた。