純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「瑛一様!?」
思わず名前を口にした。久しぶりに会ったその人物は、間違いなく玉響の間夫であり、四片の想い人でもある瑛一だったから。
驚いて目を丸くした彼も、まじまじと睡の顔を見て瞠目する。
「あれ……君、睡蓮ちゃん?」
「はい。ご無沙汰しております」
頭を下げると、瑛一は「久しぶりだね」と返して爽やかに表情をほころばせた。時雨ほどではないが、瑛一もなかなか遊郭に似合わない好青年だと、睡は改めて思う。
「廓を出たんだってね。四片から聞いたよ。だいぶ印象が違っていてわからなかった」
四片の名前が出され、瑛一の中にちゃんと彼女がいると感じただけで、睡はなんだか少し嬉しくなる。
「瑛一様も、玉響姉さんの月命日だからここへ?」
「ああ、年が明けてまだ来れてなかったからね。あと、今は客じゃないから〝様〟はやめてよ」
瑛一は愛想よく笑い、睡もつられて笑う。
瑛一が玉響の命日を覚えていたのも嬉しかった。今は四片とうまくいってほしいが、玉響の存在も忘れないでいてもらいたいから。
ふたりで供養塔の前に並び、花と線香を供えて手を合わせる。きりりとした冬の空気と、小鳥のさえずりがより一層感じられる。