純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 意外な話に時雨は目をしばたたかせるも、そういうことかと納得した。兼聡は、時雨が玉紀と恋仲だったと誤解しているのだ。


「あなたは玉響さんが好きだったんですよね? 睡さんを彼女の代わりにしていませんか?」


 否定したいところだが、睡を代わりにするという意味がよくわからず眉をひそめる。


「どうして睡を代わりにするんだ」
「睡さんは玉響さんの妹女郎だったじゃないですか! 重ねて見ていたっておかしくない。そうだとしたら、睡さんが哀れです」


 兼聡はたまらず声を荒らげた。それを聞いた時雨は、思わぬ事実に瞠目する。


「妹女郎……睡が、玉紀の?」


 まったく気づかなかった。睡も玉紀も、女郎のことはたびたび話していたが、その名前を口にしたことはなかったから。

 時雨も、妹とはいえ腹違いの子であり、しかも亡くなっているなどという話はあえてするものではないだろうと思っていた。おそらく睡も似たような考えで話さなかったのだろう。互いに気づかなくても無理はない。

 そもそも、遊郭には何人も花魁がいる。まさか、ふたりがそんなに近い関係だとは予想もしなかった。
< 198 / 247 >

この作品をシェア

pagetop