純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「玉紀……って、玉響さん? ふたりの関係を知らなかったんですか?」
唖然としたままの時雨を、兼聡は怪訝そうに覗く。時雨は頭と心の中を整理し、落ち着けたところで彼をまっすぐ見つめる。
「君が遊郭で見たのは確かに俺だし、玉紀も睡も、どちらも大切な人だ」
「なっ……!」
「睡は女性として愛しているし、玉紀は俺の異母妹だからな」
物申そうとした兼聡は、次いで明かされた事実に驚き息を呑んだ。だいぶ意外だったらしく、「い、異母妹……!?」と呟いている。
時雨はふっと苦笑を漏らし、穏やかに宥めるような口調で言う。
「妹が気がかりで時々会いに行っただけで、君が思っているようなやましいことはなにひとつない。俺たちがいがみ合う必要もないんだよ」
兼聡が複雑な表情で黙り込んだ直後、店の中から今度はごみ袋を手にした有美が出てきた。彼女も時雨に気づいて笑顔を見せる。
「あら、九重さん!」
「こんにちは」
時雨が挨拶すると、有美はなんだか物々しい様子に変わって話し出す。
「ねえ、さっき吉原で大きな火事があったみたいよ。火元はどこかの廓だって」