純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
おゆかり様とは馴染みの客のことだが、おそらく岩政を超える上客になってほしいと期待しているのだろう。女将の面食いっぷりは兼聡も知っているので、睡蓮と共につい笑ってしまう。
「女将さん、そんなににやけていちゃ先の旦那に失礼じゃありませんか。岩……なんとかさんでしたっけ」
「しょうがないじゃないか。いつの世も、女は顔のいい男に弱いんだよ」
一応たしなめる兼聡だが、女将がざっくばらんに返すのでまた笑ってしまった。
そうやってごまかすしかないのだ。睡蓮が何人もの男と身体を重ねることを、ただの髪結い師である自分に止められる術などないのだから。
兼聡の想いなどつゆ知らず、睡蓮はしゃんと背筋を伸ばした姿勢で言う。
「どんな方が来られても同じです。私は精一杯お相手をして、殿方を満足させるだけ」
鏡の中の自分と目を合わせ、言い聞かせるように口にする彼女に、兼聡はやるせない気持ちで視線を向ける。女将もじっと見つめたあと、静かに息を吐き出す。
「まあね。お前も間夫にうつつを抜かして人生捨てられちゃ困るから、そういう心持ちでいてくれると助かるんだけど」