純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「でもこの焼け方じゃ、もう藤浪楼も終わりかもね……」
四片は焼け落ちた廓をちらりと見て、無念そうに呟いた。消防が必死に水をかけているが、火の勢いはあまり弱まっていないように感じる。
今後は、藤浪楼を再建するかはわからないが、とりあえず遊女たちは行き場がなくなるので他の見世に入ることになるだろう。勝手の違う場所へ行くとなると、不安はかなり大きいはずだ。
しかし、先ほど瑛一の想いを知った睡は、四片に穏やかな笑みを向ける。
「四片は大丈夫。必ず救ってくれる人がいるから、もう少しの辛抱だよ」
「え?」
四片は意味がわかっていない様子で首を傾げるが、きっと瑛一が有言実行して迎えに来てくれるはずだと、睡は信じている。
瑛一との会話を思い返すと自然に玉響のことも蘇り、簪を握る手に力が入る。
(姉さんと時雨さんは両想いだったの? でも、ふたりはいつ会って……?)
考えを巡らせているうち、ふと以前の兼聡の言動が脳裏を過ぎった。
『俺は、あなたが睡さんを幸せにできるとは思えません』
時雨に向かってそう言い放った彼は、なにかを確信している様子だった。もしかしたら、時雨と玉響が会っているのを見たことがあったのかもしれない。