純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
だから互いに気づかなかったのだと納得しているうちに、時雨は伏し目がちになっていく。
「俺も玉紀を身請けしようとしたんだが、間夫がいるからと断られたんだ。あれは、俺から離れるための嘘、だったのか……?」
ひとり言のように口にされた言葉で、玉響の心情を悟った睡は胸がしくしくと痛みだす。
時雨の言う通り、間夫がいるというのは嘘だろう。おそらく、結ばれない相手と生きていくのがつらくて断ったのではないか。その気持ちは睡にもなんとなくわかる。
「一緒にいるのが苦しくなるくらい、姉さんは本気で時雨さんを愛していたんだと思います。私にも見せることなく大事にしていたこの簪を、道連れにしようとしたんですから」
玉響の一途な想いを知るほど、どうしようもなくつらくてたまらなくなる。
「あなたと結ばれないなら誰のものにもなりたくないと、死を選んだんじゃないでしょうか。それほどまで愛した人を……私が、奪った」
「そんなふうに言うな」
すぐさま時雨が強く否定するも、睡の罪悪感は消えない。