純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 いくら禁断の想い人だったとはいえ、玉響が命を捨てるほど愛した人を取ってしまった。自分の幸せは彼女の犠牲の上に成り立っていると、睡には思えて仕方ない。

 瞳からいくつもの雫がぱたぱたと落ち、蝶の羽を濡らす。


「このまま時雨さんのそばにいていいのか、正直わかりません。姉さんの気持ちを思うと、罪悪感で一杯ですごくつらい」
「睡」


 時雨は眉根を寄せ、焦りを浮かべて諭そうとするも、睡は「でも」と言葉を続ける。


「私はあなたを諦められない。どうしようもなく好きなんです。誰にどう思われようと、なにがあってもこの気持ちは変えられない」


 遊郭で行われていることを理解したときや、義父に連れ戻されそうだったとき、本意ではなくても最終的には仕方ないと諦められた。

 しかし、時雨と別れるのだけは嫌だと心が叫んでいる。玉響への申し訳なさをずっと抱き続けるとしても、それでも構わないと思えるほど愛してしまっている。

 駄々っ子みたいだと嘲りながらも、溢れる気持ちを止められない。


「死ぬときまで、時雨さんのそばにいたい」

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