純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
大粒の涙をぼろぼろこぼして本音を吐露した直後、切なげに顔を歪ませる時雨に強引に引き寄せられた。今度は拒否せず、ぎゅっと服を掴んでしがみつく。
「俺も同じ気持ちだと言っただろう。いてくれよ、ずっとそばに」
彼は睡を強く抱きしめ、耳元で切実な声を紡ぐ。
「もし本当に玉紀が俺を好きだったとしても、その想いには応えられなかった。それはただ兄妹だからってだけじゃなくて、俺が愛せる女性は睡だけだからだ」
「っ、時雨さん……」
「俺の想いは、君だけのものだよ」
慈愛に満ちた声が優しく響き、むせび泣きながらも安堵と切なさで胸が一杯になる。報われなかった遊女たちの前で愛を確かめ合うなど、不謹慎だとわかっているのに。
(姉さん、ごめんなさい)
背徳感に襲われ、心の中でそう繰り返す。時雨の腕に抱かれたことで、疲れ果てた身体から一気に力が抜け、意識が遠退いていく。
温かい胸に身を委ねたまま、夜に眠る睡蓮の花のごとく重い瞼を閉じた。