純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
あれはただの都合のいい妄想に過ぎないかもしれないが、玉響のほうから会いに来てくれたように思えてならない。
しばしの沈黙のあと、夢の中の、未練がなさそうな彼女の笑顔を蘇らせて口を開く。
「姉さんは、納得してあの世へ行けたんでしょうか……」
「そうだと思うよ」
睡が呟いた直後、時雨とは違う男性の声が聞こえてきて、ふたりは目を見合わせる。病室の入口のほうへ同時に顔を向けると、瑛一が戸口に寄りかかって腕組みをしていた。
「瑛一さん!?」
「富井さん」
ふたりの声が重なり、睡は目を丸くして時雨を見やる。
「なんで瑛一さんをご存じなんですか?」
「取引先の呉服屋の当主なんだ」
そう教えられた睡は、納得しつつも奇妙な繋がりに驚きを隠せなかった。
瑛一は穏やかな笑みを浮かべて「四片も念のためここで診てもらってたから、ついでに寄らせてもらったよ」と言い、睡が横たわるベッドに歩み寄る。
「やっぱりふたりは夫婦だったんだね。睡蓮ちゃんの結婚相手は紡績会社の社長だと四片から聞いていたから、そうなんじゃないかと思っていたよ。九重さんも、ネクタイにいつも見覚えのある蝶が止まっていたから、玉響との関係にも実は気づいていました」